漫画家生活60周年記念 青池保子展  Contrail   航跡のかがやき

昨年秋に開館30周年を迎えた小磯記念美術館で、初の漫画原画展が、今開催されています。
中学3年生でデビュー(「さよならナネット」)以来、独創的で美麗な世界を
築いてこられ、青池保子さんの画業60年を記念して企画されました。
今までの展覧会ではあまり出なかったモノクロ作品も含め、300点以
上が8部構成で展示され、ぐいぐいと青池ワールドに引き込まれていきま
す。特に、青池さんの肉筆での本音のようなかわいいコメントや、セリフを切
り貼りしてある物など制作過程がわかり、より興味深く見入ってしまいます。
でも、なんといっても圧巻は、例えば「魔弾の射手」の背景など、まる
でひとつの美術作品のような緻密な美しさです。また、それぞれの作品の、
衣装や風景、背景の格子窓のデザイン、纏っているビロードのマントのド
レープなど、細部の一つひとつに見とれてしまいました。
今回の展示では、それらの秘密を解き明かすかのような、物語の現地を
撮影された取材ファイルの展示もあって、きちんと綿密に調査された上での作画、ということもよくわかります。
毎号発売されるのを心待ちにして青池作品にどっぷりと浸り、背景や
ストーリーに陶酔した人にとっても、また、それほど馴染みのない人に
とっても、ぜひ鑑賞してほしい展覧会です。作品の下のキャプションに、
担当学芸員金井さんの、愛情たっぷりの優しいコメントがさりげなく書か
れているのも、お見逃しなく。
展覧会というのは、これをぜひ企画して展示したいという担当者の、作
家さんへのリスペクトに裏打ちされた熱意の賜物なのだと、今回もつくづ
く感じながら、蝉の鳴き声が降るような小磯記念美術館をあとにしました。
■会期 7 月15日〜9 月24日(日)月曜日休館
8/ 27、9/ 10、9/ 24(い
ずれも日曜日担当学芸員
による解説会)2023-8

トンカ書店 私の好きな森本さんの本屋さん

あまりにも突然の、悲しいお知らせでした。
私の「みちくさKOBE」(2022年2月発行)を、唯一販売してくださっている「花森書林」の森本恵さんが、5月28日に亡くなっていた、と弟さんの頓花慎太郎さんから聞いたのは6月の初めでした。43歳でした。
古書店の組合を代表して参加されていた森本さんと初めてお会いしたのは、数年前の「活字文化について考える会」で、元海文堂書店の島田誠さんたちとの対談でした。
2005年(平成17)年に開業した森本さんのお店「トンカ書店」は、分かりに
くいトアウエストの一角にひっそりとありましたが、その存在感ゆえに多くの〝
トンカファン〞が通っていた街の古本屋さんでした。
ビルの老朽化で致し方なく2018年12月に一旦閉められ、「花森書林」として再スタートされたのは、2019(平成31)年2月のことでした。元町商店街の北側の、かくれんぼするには良さそうな路地裏の「花森書林」は、前よりもさらに謙虚な佇まいで、ここに在ります。絵本、文学全集、漫画などに加え、愛らしい雑貨、メモ、シール、ブローチなどが所狭しと置かれてあります。
森本恵さんが他界されてからまだ2か月足らずですが、只今8 月21日(月)ま
で「トンカ書店× 花森書林-はじまりは2005年-」という企画展がお店の一画で開かれています。数年前からの闘病生活の中で、恵さんは弟慎太郎さんには、亡き後、私のことを思ってお店を続けなければ、とは思わないでほしい、慎ちゃんの人生なのだから、と言い遺されていたそうです。わずか4年間の姉弟の「花森書林」ではあったけれども、この居心地の良い空間で出会い、また、
支えられた多くの方々へのご恩返しがしたい、と今新たな決意で、前と変わるこ
とのない「花森書林」に立たれています。
古書店は店主が作るのではなく、お客さまが持ち込まれた物で作られている、と
いう恵さんの言われていた通りの〝ざっくばらんな本屋さん〞に、慎太郎さんの
流儀がどのように展開されるのか、楽しみにしているのは、わたしたちだけでな
く、古書店主として、姉として彼方より見守っている恵さんかもしれません。
■神戸市中央区元町通3 -16-4
※火曜日・水曜日定休
営業時間13: 00〜19:00
☎(078)333-4720

2023-7

御影公会堂と御影公会堂食堂

さくらの花がいつまで持つだろう、風で散らないだろうかと気になっていた日々が過ぎ、心穏やかに過ごせる頃になりました。
歴史的な建物だけでなく、同様に歴史を刻んだ美味しい味にも出会える所が御影公会堂です
公会堂は、1933(昭和8)年、白鶴酒造七代目嘉納治兵衛氏の篤志により石屋川のほとりに建てられました。
会議やイベント、結婚式にも(昭和58年まで)場を提供し、市民のための拠点としての役割を果たしてきました。
六甲山を背景に、独特の美しいスクラッチタイルで覆われた壁面が、周囲の景色に溶け込み馴染んでいます。石屋川と国道2号の角にあるので、屋上の塔と共に記憶に残る建物です。
設計は、清水栄二で、現存する「神戸市立生糸検査所」、「市立魚崎小学校」、「甲南漬資料館」など多くの建物の設計で知られています。そして、耐震性を重視したということの証で、これまでの90年間、阪神大水害や太平洋戦争、大震災などに遭いながらも、決定的なダメージを負うことなく生き残ってきた、ということも驚きです。
さて、「御影公会堂食堂」は、御影公会堂の地下にあります。設計された当時のままのレトロながらモダンで、地下といいながら、適度に柔らかな光が差し込むすてきな空間です。大阪ホテル(現在のリーガロイヤルホテル)で修行され、披露宴の料理も手掛けノウハウを持っていたのが鈴木貞さん、この経歴から、公会堂の食堂に抜擢されたとのこと。二代目鈴木利裕さん、そして鈴木眞紀子さんがしっかりと命懸けで守られてきた場所と味を引き継がれています。二代目のお父様の背中を見ながら、レシピではなく体と舌で味を覚えてデミグラスソースも引き継がれています。
神戸の洋食に誇りを持っている”神戸っこ”にとって、何か大事な場面に家族みんなで一緒に来たところ、ここで結婚式を挙げられた人がお孫さんを連れて来るところ、が「御影公会堂食堂」です。

2022-4

 八社巡り  ~節分の日の厄除け~

「地球の歩き方」(1979年創刊)は、ひと昔前、世界を旅する学生にとってはバイブルのような存在でした。が、海外旅行離れと紙の書籍離れに、海外渡航の制限が追い討ちをかけて売り上げはほぼ消滅。ところが、今国内の「御朱印」シリーズなど次々と巻き返しを図り活路を見いだしている、という記事を驚きつつ興味深く読みました。
御朱印での寺巡りブームは,全国的な傾向になっているようです。
さて、その神戸でのブームの、再来のきっかけのひとつが「交通局御朱印悵」です。
2014(平成26)年に、市バスの乗車促進のため、市バスで巡る参拝者向けのパンフレット「御朱印悵」(無料)を、5000部作成しました。ところが、あっという間になくなり、すぐに15000部を増刷することになり、8年間で既に4万部を配布、案内所での根強い人気者になっています。
神戸には古来、節分の日に、一宮から八宮までの数字を冠した神社を巡拝して厄を払い願いを祈る風習がありました。
古文書には、生田神社と縁故の深い「裔神(えいしん)」として、8社の名が記されているので、少なくとも江戸時代にはこの風習があったのではと推測されています。一時下火になりましたが、戦後、神戸の厄除八社として協力、今のブームに繋がってきました。八社の位置を地図で見てみると、生田神社を北斗七星の柄杓で囲むように配置されています。
一宮から順番にとか、厄除けに拘らなくても、思いたった時を吉日にどの神社からでも初めてみてください。
一巡すると約13キロ、歩くだけで3時間はかかりますので、市バス・地下鉄も利用してくださいね。
「市バス八社巡り」御朱印悵には、田辺眞人先生による詳しい解説が載っています。
御朱印悵は、市営地下鉄の各駅や神戸市総合インフォメーションセンターなどに置いています。

2022-1

隠れた紅葉の名所〜徳光院

 

桜の頃ほどではありませんが、秋が深くなってくると、どこか紅葉狩りに行きたいなぁと気持ちが少し騒ぎます。
テレビや新聞などでどんなに美しい紅葉や黄葉を見ても、奈良や京都まではと、なんとなく億劫になってしまいます。
そこで今回は、中央区にあるのにそれほど知られていなくて、思いたったら歩いて行ける、紅葉の美しい所をご紹介したいと思います。
新神戸駅の下を通り抜けて、すぐ背後にあるレトロな砂橋(いさごばし)を渡り、布引の滝に向かって坂道を登って行きます。その途中に「徳光院」はあります。
この付近は砂山(別名丸山)といわれ、生田神社が最初に祀られていた場所でした。が、古い時代に大雨で流され、今の位置に移ったと伝えられています。
徳光院は、1905(明治38)年に川崎造船所の創業者、川崎正蔵が建立した臨済宗の寺院で、境内にある多宝塔は国の重要文化財に指定されています。
新緑の頃の青紅葉も、なんともいえない風情がありますが、やはり紅葉の頃は見上げるような大木が、朱色や黄色にお化粧しているかのような様は、豪華で見事です。
そのまま見とれながら滝の方に足を伸ばし、4つの滝の音を聴きながら下山するのも楽しいでしょうか。
こんなに近くで、”錦繍(きんしゅう)”を味わうことができるのも、神戸ならではの贅沢かもしれません。

神戸市中央区葺合町布引山2-3
電話078-221-5400

2021-11

五色塚古墳

神戸市内の人なら、小学校の時の見学などで一度は訪れたことがあると思われる「五色塚古墳」は、4世紀後半に築かれた、兵庫県下最大の前方後円墳です。
明石海峡を往来する船を眼下に見下ろすことのできる絶好の高台に位置していますが、当時は、周辺にこのような巨大な古墳を支えたと思われる集落などはなくて、ここに突如として築かれた「五色塚古墳」には、いまだに多くの謎が残されたままです。
墳丘は、全長194メートル、3段で築かれている巨大な古墳で、円筒埴輪約2200本がずらりと並べられていた、と推定されています。また墳丘の斜面には、全面に約223万個の丸い石が葺かれていたようで、この石は、対岸の淡路島から運ばれてきたとみられています。
また、「五色塚古墳」は「偽墓」ともいわれてきましたが、墓自体は本物の可能性も高く、この地の有力者が自発的に造ったのではなく、ヤマト政権とのつながりが強い人物で、周辺を支配した有力者の墓ではないか、と考えられています。
1921(大正10)年に、西側にある小壺古墳とともに国の史跡に指定されてから、100年をむかえ、「国史跡 五色塚古墳あゆみ」の企画展が、神戸市埋蔵文化財センターで開かれています。
まずは、墳丘に立ちその雄大な景色を眺め、豪族気分になってから、様々な疑問を持ったまま、謎解きゲームの感覚で企画展に足を運んでみてください。

「五色塚古墳」4月~11月無休、山陽電鉄霞ヶ丘から10分
☎078-707-3131
「神戸市埋蔵文化財センター」月曜日休館、市営地下鉄西神中央駅から8分、
☎078-992-0656
いずれも無料
2021-6-25

「ミナ ペルホネン / 皆川明 つづく」展

デザイナーの皆川明さんが設立したブランド、”ミナ ペルホネン”はフィンランド語で、私の蝶、という意味です。
ファッションからスタートした活動は、家具、絵画、建築模型から詩作まで生活全般に広がり、様々な角度から、皆川さんの25周年に亘る仕事が紹介されています。
展覧会の会場入り口の壁一面には、50センチ四方のクッションが330個飾られていて、その圧巻の風景に、まずは驚きました。いつも見慣れた近代美術館のコンクリートの壁に、花が咲き乱れているかのようです。
また「洋服の森」のコーナーには、1995年から2020年までの洋服390体以上が年代ごとではなく展示されています。短いサイクルで消費されついく服には背を向けて、時代を経ても長く愛用される服を目指している、という皆川さんの哲学が現れているコーナーです。
私が今回の展覧会で最も感動したのは、「洋服と記憶」のコーナーでした。
所有者からお借りした服15点を、それぞれの所有者の思い出と共に展示されていました。照明の落とされたその空間で、時に洋服が単なる洋服ではなく、その方々の人生そのものになっていることに、深く感動し自然に涙がこぼれおちました。
この展覧会では、皆川さんのイメージしたデザインは、多くの卓抜した職人さんの手により引き継がれて制作されていることが、丁寧に語り継がれています。
この時代に、今一度、丁寧に誠実に暮らし生きていくことの意味合いを問われた、かのような展覧会でした、
ミナ ペルホネン/皆川明 つづく
兵庫県立近代美術館
2020年7月3日(金)~11月8日(日)
日時指定の完全予約制
0782620901

「神戸市民山の会」のこと、知っていますか?その2

毎日登山の会や、各地に支部を置いている「神戸ヒヨコ登山会」などをまとめて、神戸市全体の組織として「市民山の会」ができたのは昭和23年のことでした。
神戸市民のレクリエーション活動として、登山を通じた健康づくりが目的に神戸市がしていますから、誰でも参加することができます。
原則毎月第3日曜日に集合場所に行けばよいので、一人ではなんとなく心配だけれど、せっかく六甲山の豊かな山懐に住んでいるのだから山歩きを楽しみたい、という人には良い機会になります。年間通じた毎月の行程は、ヒヨコ登山会のベテランの達人のアドバイスで、季節や歴史や楽しさなどの要素が十分に考えられ、そのうえに、一般向、家族向も考慮されて年間通じて六甲山の東から西までうまく計画されています。
次回2月16日日曜日は、阪急岡本駅午前9時集合で、約6キロの一般向向きコース、「梅咲く保久良神社」岡本八幡神社広場~見晴らし展望所~保久良神社までのコースです。
私は、「市民山の会」で安全で楽しい道を自分の中で学習して、後日その道を復習しながら独り歩きを楽しんでいます。
ぜひ、六甲山歩きを楽しむための、第一歩を、またかつてはよく山歩きしたのだけどね、という方も気軽に参加してみてくださいね。

「神戸市民山の会」のこと、知っていますか?その1

 

神戸ほど、山と海がバランスよく仲良く配置されている大都市は他に見当たらないように思います。
今日はちょっと山登りでもしようか、と急に思い立っても、どこからでも、すぐに山にとりつくことができます。
というのも、六甲全山縦走路、太陽と緑の道、山麓リボンの道、徳川道など眺めているだけでも楽しくなるような道が、きちんと整備され手入れされて、縦横に走っているからです。
さて、私もある日曜日、用事を済ませたのが10時で、一旦もう今日は無理かなぁ、と諦めかけたのですが、思い直し「市民山の会」に参加することにしました。
新神戸駅9時集合にはとても間に合わなかったので、元町駅山側から大師道を逆走して、すでに出発して数時間で再度公園でお昼休憩をして下山してくる一行を待ち受けることにしました。大師道を登り詰めた所の猩々池で、この日の参加者243人と合流して、再び諏訪山公園まで下山しました。それでも、2時間半で11キロ約18000歩は歩いていました。
心地よい汗をかいて自分としては大満足の休日でした。
毎日登山の会や、各地に支部を置いている「神戸ヒヨコ登山会」などをまとめて、神戸市全体の組織として「市民山の会」ができたのは昭和23年のことでした。
神戸市民のレクリエーション活動として、登山を通じた健康づくりが目的に神戸市がしていますから、誰でも参加することができます。

布引の滝で”野点”しませんか

 

新神戸駅から山道を約20分ほど登ると、「布引の滝」4つの滝で一番大きな雄滝(おんたき)に着きます。
市街地からこんなにも近い所に、姿の美しい、雄壮な滝の景色に出会えるのは、全国的にも珍しいので、近年は日本各地からのみならず、欧米を中心に世界各地からの観光客が、「神戸の秘境」として訪れています。
さて「神戸布引 野点」として初めて開催されたのは、、2017(平成30)年5月でした。新緑と紅葉の頃に計画されて今回は4回目となります。
堅苦しくてハードルの高い”お茶会”ではなくて、コーヒーを飲むような感じで気軽に参加ができて、なお、茶事に親しんでもらいたい、と有本先生(表千家)が茶席を担当してくたさいます。
雄滝の水の音がBGM、という贅沢さです。
咳払いをしても、お茶碗を何回どちらに回しても、気兼ねをする事なく、登山の服装で参加してくださいね。
まずは、季節のならではの和菓子をいただいてから飲む「お茶」の美味しさ、は格別です。
行きは滝を眺めながら、帰りは、中央区では屈指の紅葉の名所の徳光院を抜けて下山が、おすすめです。
駆け足で過ぎて行く季節を、こんなにも近くで楽しむことができます。

日時:2019年 11月30日(土)一席10:20~
二席11:10~
三席~13:20~
四席~14:10~
(所要時間: 各30分)
場所:おんたき茶屋
※雨天決行
参加費:800円
定員:各席15名(椅子席)
申込み・問合せ:078(241)3484