彫刻の街 神戸

春が駆け足でやってきました。
市内のあちらこちら、摩耶ケーブル下、宇治川沿い、須磨浦公園…などの桜の咲き具合が気になって落ち着かないのもこの頃の心模様の一つですね。
そこで、今回は、いつでも、どんな時でも思い立った時にお散歩して美しいものに触れてもらおうと思います。
神戸は全国一とも言われる『野外彫刻の街』です。そのきっかけになったのは、1968年(昭和43年)に始まった「須磨離宮公園現代彫刻展」でした。その後、「神戸具象彫刻大賞展」も実施され、その優秀作品が市内に設置されました。街を舞台に飛び出していった彫刻たち。「花と彫刻の道」(新神戸フラワーロード)、「みどりと彫刻のみち」(神戸文化ホール~神戸駅)の他にも、講演や広場に約500点が設置されているんですよ。
それらの中でも、とりわけ私が気に入っている作品は、東遊園地の南東の端にある「虹の石」という彫刻です。‐虹の足というのはふ確かに美しき‐という後藤比奈夫さんの句が黒い御影石に刻まれています。32年前に完成したそれは、手水鉢のようにくり抜かれていて、溜まっている水の底の俳句に気が付いて足をとめる人は、ほとんどいません。景色の中に同化しさりげなく置かれているため、作品とは気づかないのかもしれません。 私は、税関前からフラワーロードの西側を歩く時には、木陰にひっそりと在るこの「虹の石」の水面から目をこらして句を眺めるのを愉しみの一つにしています。美術館なら触ったりできないような作品に、目の前で食堂を営む人が布巾をかけていたり、また、腰掛けていたりという光景をよく目にします。そんな光景を目にする時、私はなんと贅沢な街に暮らしているのだろうかと感じます。
神戸は、街全体が美術館のようなもの。自分だけのお気に入りの彫刻を探してみて下さいね。

2013-3-22

神戸花物語

寒さの角が取れ、どことはなしに春の気配がしてきました。毎日眺めている六甲山も笑いかけているようです。異人館、居留地に代表される神戸ですが、「神戸ブランド」として誇るべきもののひとつに「花」があるのを知っていますか。
神戸市域の1/3占める北区、西区には豊かな農業エリアが広がり、花の栽培にも適した温暖な気候に恵まれ、花の生産が行われています。
伊川谷町(西区)での切り花の栽培は、明治初年から始まっていますから100年以上の歴史があります。また、淡河町(北区)では、昭和28年に「新鉄砲ゆり」を導入。その後、系統を選び交配を重ねた結果できた「ミスオーゴ」などのオリジナル品種を育てるのに成功し、これは門外不出として商標登録もされました。洋花のユリの代表のような「カサブランカ」と比べた違いを尋ねてみると、淡河の新鉄砲ユリは1本の枝に3~5輪の花がつき、それらが下向きに咲くのではなくやや上向きに咲き、横から見たその姿はまるでラッパのようでもあり、清楚で涼しげ、凛とした風格はため息が出るほどの美しさと…、褒め言葉は止まりません。そんな「淡河の鉄砲ユリ」は7月から出荷開始。(10月位まで)どこかで是非、一目見てくださいね。
ユリが終わるとチューリップの出番です。これも今から60年以上も前に富山県から球根を仕入れ取り組み始めたのがチューリップ生産の発端となりました。その後、貿易の自由化に伴いオランダから球根の輸入もし、今年は181品種80万本ものチューリップが出荷されています。
神戸は、冬場も好天に恵まれることから、花は大きく色鮮やかなだけでなく、葉の色までも鮮やかで、市場の仲買人さんたちの評価は高く人気があり、全国的にも折り紙つきの品質だそうです。パンや洋菓子に、神戸産の花を添えてのプレゼントも、神戸らしさがプラスされた素敵な贈り物だと思いませんか。
今「花物語」として神戸の花全体のブランド化が進められり、神戸市内産のお花を扱っている小売店は東灘区や中央区に10店舗あります。3月1~3日に、ハーバーランド「デュオドーム」において行われるイベント「神戸花物語」には、切り花、鉢物併せて2万本の花で溢れています。会場では、「これがチューリップ!?」と目を見張るたくさんの可愛らしい花と、それらを愛しみ大切に育てた生産者の方々にも会えますよ。

須磨離宮公園 梅見会

まだまだ寒いこの頃、どこかでかくれんぼをしているはずかしがり屋の春を探してみませんか…。
須磨離宮公園では、2月9日(土)~3月10日(日)まで「梅見会」が行われています。厳寒の中でも凛として咲く梅、2月になると梅林の約25種160本の梅が次々と色鮮やかに輝き始めます。 さて、みなさんは離宮公園に入る時、どこから入園されますか?
私はいつも山陽電鉄「月見山」駅から「バラの小径(こみち)」と書かれた案内板と路上に埋め込まれたバラの陶板を辿って離宮道を通り正門から入ります。この離宮道は行幸(ぎょうこう)道とも呼ばれ、脇の歩道より少し高くなっています。 離宮公園の歴史をひもといていくと、もとは、シルクロード探検で知られている大谷光端(こうずい)の西本願寺月見山別邸でした。その別邸と背後の山林を当時の宮内省が買収し、天皇のご宿泊のための別荘「武庫離宮」として完成したのが100年前の大正3年です。3500・の総檜造りの御殿は1945年の空襲で焼失してしまいましたが、約30年の間に、大正天皇、昭和天皇、満州国溥儀(ふぎ)皇帝らが滞在されています。離宮道から正門を抜けて御殿の玄関までが馬車道と呼ばれていました。何と優雅な響きでしょうか。他にも、ベルサイユ宮殿風の噴水公園や「華麗なる一族」のモデルと言われている岡崎財閥の屋敷跡もあります。
梅を観ながら、ベンチに腰をおろし遠くに神戸のうららかな海を眺め、贅沢な時の流れに身をおいてみませんか。