真珠会館がひと休み

旧居留地の南東の端に、「日本真珠会館」はあります。街歩きのガイ
ドの時に前までご案内しても、これが有名な真珠会館だと気がつく人はほ
とんどいません。外から見るだけでは、その良さが分かりにくいのかもし
れません。残念なことに、今年2023年の3月末で閉鎖されることになり
ました。真珠会館は、1952(昭和27)年に兵庫県などか中心になり、
検査や取引の拠点として建てられました。県営繕課の建築家、光安泰義氏
の設計でモダニズム建築として評価され、国の登録有形文化財にも認定さ
れています。
過日、内部の隅々まで最後の見納めをしてきました。昭和天皇が来られ
た時に乗られたという手動のエレベーターは、すでにありませんが、壁面
のスイッチもモダンな椅子も、天井の和洋折衷のデザインも71年間大事に
使われてきました。
私が一番感動したのは、自然採光で真珠の選定をするために、建物は、
六甲山の緑を通した光を取り込むための向きに建てられ、窓ガラスも光をその
まま取り込むために当時としても高価な素材にこだわっています。
黄金比率で計算されていて上りやすい階段、モダンなデザインの照明器
具、トイレのすりガラスの可愛さ、時代の先取りさながらの中庭、玄関
ポーチの緩やかなカープ、窓の面格子のほんのわずかのカーブなど、光安さんの小さな可愛らしい遊び心のデザインに、いつも胸がキュンとなります。
71年前に生まれた、単に神戸ではなく「日本真珠会館」。ただただ、じっと居留地の隅で佇んでいたのではなく、「真珠の街神戸」の顔として大事な建物でした。
今後の具体的な計画は決まっていないそうです。私は、この建物が積み
重ねてきた輝かしい記憶を心に刻みながら、なお語り継いでいきたいと
思っています。

2023-3

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