進行肺がんにおける抗がん剤+免疫療法の効果

免疫療法は、もともと我々の体内にあるリンパ球ががん細胞を攻撃するように促すことで効果を発揮します。京都大学教授の本庶佑先生は、PD-1という活性化したTリンパ球の表面に発現する物質を発見し、2018年にノーベル賞を受賞されました。このPD-1、もしくは腫瘍細胞の表面に発現してPD-1と結合する物質PD-L1のどちらかをブロックする薬剤(免疫チェックポイント阻害剤)を用いた免疫療法が、進行肺がんの治療で近年大きな成果をあげています。もともと人間のTリンパ球はがん細胞を攻撃する力を備えているのですが、がん細胞のPD-L1がリンパ球のPD-1に結合すると、リンパ球の活動が抑制され、がん細胞は攻撃から逃れる(無視される)しくみを持っています。そこで、PD-1やPD-L1をブロックする薬剤(オプジーボやキイトルーダなど)を投与すると、リンパ球ががん細胞を認識できるようになり、がん細胞を攻撃して、がんを退縮させることが出来るようになります。このような免疫療法が従来の抗がん剤治療と最も異なる点は、一旦がんに対して効果を発揮すると非常に長期間効果が持続して、完治したかの如く、がんの再発が抑えられることがあることです。

しかし、免疫療法単独では効果が得られる確率は意外と低く、全く効果のない症例も少なくありません。一方、抗がん剤は免疫療法のように長期に効き続けることは稀ですが、早期に腫瘍の増殖を抑える確率は免疫療法よりも高いとされています(図1)。

そこで、抗がん剤で早期の治療効果を狙い、免疫療法で長期の治療効果を狙うという組み合わせで、抗がん剤+免疫療法の相乗効果が期待されます(図2)。

実際に進行肺がんの一次治療で、抗がん剤+免疫療法と抗がん剤単独の比較試験が行われ、その結果、抗がん剤+免疫療法が患者さんの生存期間を延ばすことが明らかにされました。このような背景から、現在の進行肺がんの一次治療では、EGFRなどの遺伝子変異があって分子標的治療の効果が期待できる患者さん以外は、全身状態が良好な患者さんのほとんどで抗がん剤+免疫療法が使用され、大きな治療効果をあげています。