持ち帰り残業と労災

これまで、持ち帰り残業については、明確な労働時間の把握が困難であったことや、職場における労働に比して緊張の程度が低いことなどから、裁判上、労災としての脳心臓疾患の原因となる過重負荷や精神疾患の原因となる心理的負荷の一要素として考慮されるに留まることが多くありました。

しかし直近では、持ち帰り残業もパソコンで作業することから、ある程度客観的に労働時間を認定することができるようになりました。また、一般論としては「職場における労働に比して緊張の程度が低い」といえるとしても、職場である程度残業してからさらに帰宅後も持ち帰り残業をしていた等のほかの事情次第では、持ち帰り残業の時間も疾患と因果関係のある労働時間として考えられるようになってきています。

自宅作業時間の質的な評価についてはいろいろなご意見があるところだとしても、労働密度はどうしても低くなりますし、裁量の幅が大きいことから、業務起因性の文脈で職場の労働時間と同一に評価することはできないと個人的には考えています。

しかし、こういう判断が出ている以上、経営者サイドとしては、安易に持ち帰り残業を認めるべきではないといえますし、従業員としても、十分に健康リスクについて認識しておくべきということになります。

なお、この話は、終日自宅でのリモートワークというケースには直接は当てはまらないと思われます。職場に比して労働密度や緊張の程度が低いという一般論がモロに当てはまりますので、仮にリモートワークが長引いて夜遅くに及んだとしても、残業代の根拠にはなることは別論、労働災害と因果関係のある労働時間とは認められないと考えます。

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