図書館資料のオンライン送信

昨春、コロナ騒動により図書館が長期間閉館したことから,インターネットを通じた図書館資料へのアクセスに対するニーズが顕在化しました。かかる状況をふまえ,文化庁文化審議会のワーキングチームは,昨年11月に,①国立国会図書館が入手困難資料のデータを各家庭等に送信すること,および②補償金の支払を前提として図書館等が一定範囲で所蔵資料のコピーを利用者に送信することを可能にする著作権法改正を提案する報告書を公表しました。

従前より、図書館所蔵資料については、一定の要件の下で、複写サービス、電子化、入手困難資料のアクセス容易化が、「文化的所産の公正な利用」の観点から認められていました。

しかし、上記の手立てだけでは、図書館の閉館という事態には必ずしも対応できません。

そこで、資料のメール送信を目玉とするこの度の法改正案提案の流れになりました。図書館の蔵書のコピーをメールで受け取れるようになれば利用者にとって非常に便利であり、研究活動の発展にも資することから、前向きかつ有意義な議論となることは間違いありません。
もっとも、著作権の議論では常に較量されるべきことですが、著作者の利益に対する十分な配慮が必要となります。その観点から上記②の補償金が必要となるのですが、これがどの程度の水準になるのかはまだはっきりとした枠組は見えていません。

この辺りについての詳細を詰めつつ、貴重な知的資源が広く共有されつつも、権利者にも十分な利益を確保して著作活動が委縮しないような制度設計になるよう、関心をもって見守りたいと思っています。

2021-4-23

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