昨年から、質問権の行使や、いわゆる宗教二世の救済など、旧統一教会についての話題がメディアを賑わせています。そして、その多くは、旧統
一教会の組織としての悪質性についての話題です。もちろん、これに苦しんでいる人がいるのであれば、看過してよい問題ではありません。
しかし、旧統一教会をめぐる話題は、そもそも、大臣や国会議員という国家権力の担い手と旧統一教会との関係が、①いかなる宗教団体も、国から
特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない(憲法第20条1項)②国及びその期間は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならな
い(憲法第20条3項)③公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、(中略)これを支出し、又はその利
用に供してはならない(憲法第89条)という、政教分離原則に違反するのではないか、という文脈で問題となったはずです。そうであるにも関わら
ず、政教分離違反を是正するという観点からの調査や政策はほとんど行われず、いつの間にか旧統一教会の悪質性に議論がすり替わっています。私
などは、これは、特定の宗教団体を母体とする政党が連立政権を担っているという事実から目を背けさせようとしているのか、我々が思っている以
上に深刻な旧統一教会と権力との癒着を深掘りさせないようにしているのか、あるいはその両方か、などと考えてしまいますが、みなさんはいかがで
しょうか。
もちろん、私の推測はまさに推測に過ぎないのですが、少なくとも、「元々は政教分離の話だったじゃないか」という観点から報じるメディアが
ほぼ皆無であることは、由々しき事態だと感じています。
本来権力を監視すべき報道機関が忖度報道に終始し、アテにできないのであれば、自分で情報収集して考えるしかありません。その際に、「報道
されていないことは何か」と考えること、今回のトピックスでいえば「なんで政教分離の観点からの報道はされていないのだろう」と考えることは、
ひとつ、有用な切り口になると考えています。
そしてそのためには「原理原則」を抑えることが必要になります(今回のトピックスでいえば政
教分離「原則」)。
本連載が、その一助となれば幸いです。
202301-27