本連載は既に80回を超えていますが、おそらく交通事故のトピックスは一番多く取り上げているテーマではないかと思います。そしてそのうち、自転車事故についても、これまで何度か取り上げさせて頂いています。それは私が、職業上この類型の事案に関わらせて頂き、あまりにも日常的な行為から、到底個人では背負いきれないような無慈悲な結果がもたらされることに、言いようのない衝撃を受けているからです。
国や自治体もこのような自転車事故に対してはいろいろな方策を打ち出していますが、私たちが住む兵庫県では、2015年に全国に先駆けて、条例で自転車保険の加入を義務付けられたことはご存知でしょうか。この流れは全国に広まっており、現時点では11都道府県、7政令市で保険加入が義務付けられています。
これまでも何度かお伝えした通り、自転車であっても、死亡事故や重度の後遺症が残るような事故が発生しており、裁判で何千万円という多額の賠償責任が認められている事案もあります。せめて金銭面での償いだけでも可能な状態にしておくことは、自転車に乗る者の責任といっていいと思います。また、保険に入ることで、自転車でも重大な事故につながることがあるんだということを改めて認識する意味もあると思います。
自転車は極めてエコで、小回りの利く便利な移動手段ですし、また健康増進の効果も見込めます。気候のいいときなら乗ること自体が手軽なレジャーにもなります。いろんなメリットがあるからこそ行政もシェアサイクルを推進したりして利用シーンが増えており、それ自体はとてもいいことのはずです。せっかくの有用なツールだからこそ、負の側面がクローズアップされることのないよう、まずはルールとマナーを守った安全運転、そして万が一の場合に備えた保険の加入を是非お願い致します。