入れ歯安定剤と酒気帯び運転

先日、東京高裁は、道交法違反(酒気帯び運転)に問われた男性の控訴審で、「警察の呼気検査で、入れ歯安定剤に含まれるアルコールが検知された可能性がある」として、逆転無罪の判決を言い渡しました。判決によりますと、男性は、自動車通勤途中に呼気検査を受け、基準を超える呼気1リットル中約0・15ミリグラムと0・3ミリグラムのアルコールが検知されたとのことですが、かかる呼気検査の約30分前に入れ歯を装着した際に、アルコール16・9%を含む安定剤を使っていたということです。

入れ歯安定剤に酒気帯びに至るほどのアルコールが含有されていることは認識していなかったし、またそれも無理はないということで、酒気帯びの故意が否定されたものと思われます。

もっとも、故意が否定されて酒気帯び運転罪には問われなかったとしても、客観的な危険性が減退するわけではありません。入れ歯安定剤が含むアルコールの影響により判断・制御能力が減退すれば、普段よりも人身事故を起こす可能性は高くなるでしょう。そうなると、民事刑事上の責任はもちろんのこと、加害者としての重荷を、生涯背負っていかなければならないかも知れません。

今回は、身近で、そして意外なものに基準値を超えるアルコールが含有されていることを、そしてそれが刑事事件として問題になったということを知っていただきたく、事例をご紹介しました。車の運転をされる際には細心の注意を払うことを再度銘記された上で、責任賠償保険等の備えについてもご確認下さい。
2018-10-26号

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