法定養育費

離婚後の養育費については、協議、調停の際に取り決めがされないことも珍しくありません。また、取り決めがされたとしても、取り決めを文書化しておらず、後に事実上不払いになった際に、取り決めの事実、内容を証明できないことも多々あります。取り決めがない場合、不払いがあっても請求できませんので、ひとり親家庭の困窮につながっているとの指摘があります。

このような状況の対策として新設が見込まれているのが、離婚時の取り決めがなくても相手に請求できる「法定養育費」の制度です。また、その金額については、法務省が子どもひとりあたり月2万円とする方向で検討しているこのことです。法定養育費を含む民法改正は、2026年5月までに施行が予定されています。何ももらえなかった現状に比べるとマシになるケースが多少増えることは確実ですので、その点では評価されるべき内容であるといえましょう。

しかし、2万円という金額は、当然ですが、義務者権利者の実情を全く反映していないので、子どもの年齢などによっては、ほとんど助けにならない場合も多くあると思われます。

また、この「法定養育費」され払われない場合には、調停を経なくても強制執行ができるように法改正される見込みなのですが、この場合でも、強制執行の手続は必要になりますので、ひとり親にとっては引き続きそれなりに高いハードルといえそうです。

個人的には、親権者の定めのように、養育費の定めも離婚の要件(離婚届記載事項)にしてしまえばいいのに?と思うのですが、今のところ、そのような流れにはなっていないようです。

離婚後も両性で子どもを養育していくという意識の希薄さ、そもそも義務者の側も困窮しているなど、この論点は、文化的経済的な社会背景を持つ問題です。いろいろなことに想像力を働かせるきっかけにしていただければと思います。

2025-9