今年の梅雨は例年になく早く終わり、猛暑の夏になりました。この季節は豪雨や台風などによる自然災害が毎年起こります。昨年7月3日に熱海市で

 

 

 

発生した土石流が住宅を襲い民家をなぎ倒していく映像は衝撃的でした。3日間で400㎜を超える豪雨で大量の水を含んだ土砂が山の斜面を下り、大きな被害が出ました。土石流の起点となった場所の残土による盛土が崩落の引き金になりました。

神戸でも同じことが55年前に起こりました。1967年7月9日の豪雨によって中央区の市ケ原で発生した「山津波」(斜面崩壊)で21人が亡くなりました。梅雨前線による豪雨によって夕方から六甲山地から市内に「鉄砲水」(土石流)が襲い、山崩れが発生し、家屋の倒壊・流失が相次ぎました。市ケ原で「山津波」が発生したのは21時15分。世継山で斜面崩壊が起こり、土砂が谷底に滑り落ち、民家と駐在所が押し流されました。現在の布引ハーブ園の場所にゴルフ場があり、この開発が斜面崩壊の原因であると裁判が争われました。被害があった市ケ原地区は新神戸駅から森林植物園に向かうハイキング道に沿う市ケ原堰堤の北100mの場所です。半世紀たった今も瓦やタイル・食器の破片もたくさん落ちていて、人々が生活をしていたことが生々しい記録として残されています。崩壊箇所は、今ではしっかりとした土留め対策工事がされ、立派な森林も育っています。しかし不自然な自然の改変が人の命を奪う自然災害の原因や誘因になることがあるという教訓は忘れないようにしたいものです。

 觜本 格(かがく教育研究所)

2022-7