前回、サルや仲間は樹上生活をするために、四肢の前も後ろも木の枝をつかめるようになっていて「4本手」の動物であることを書きました。シカやウマなどが「4本足」の動物であり、地表を歩き、走るためのしくみを発達させたのに対し、サルの仲間は「つかむ」ための手を発達させました。ヒトにもゴリラにもある指紋は「すべり止め」のしくみです。

ヒトは700万年前に、チンパンジーとの共通の先祖の類人猿から生まれました。熱帯雨林の樹上生活をやめて、地上に降りて「直立二足歩行」を始めた仲間がヒトです。気候変動によって森林が減少して、地上に降りざるをえなかったのでしょう。地上では大型の肉食獣に襲われるリスクもありますが、新しい食物を手に入れることができました。草原で視線を高くするために2本足で立ち上がって、できるだけ遠くを見通そうとしたでしょう。

そして、何よりも前の手が自由になりました。その手で石を投げたり、棒を持って獣と闘ったりしたでしょう。木の実をとったり、手に入れた食物を運んだりしたでしょう。一方、2本足で安定して歩くために大きな「足の裏」を獲得するようになりました。二足歩行をするためには、1本足で体を支える必要があります。歩くとき1本の足が地面についた時には、もう1本の足は地面を離れているからです。1本足で支えるために「土踏まず」ができ、アーチで体重をかかととつま先に分散するようになっています。ヒトは直立二足歩行をすることによって、細かい作業や道具を作る人間らしい手を発達させ、跳ねたり長い距離を歩いたりできる人間らしい足を発達させました。何百万年もかかって、ヒトはすばらしい手と足を作り上げました。(続く)