4歳の孫が7月の連休にやってきました。私の部屋を探検すると楽しいおもちゃや不思議なグッズが見つかるのでお気に入りです。「おじいちゃん、チョウがいる」と呼びに来ました。昨日、かごの中に「サナギ」がいることを教えていました。「アオムシ」(幼虫)がサナギになって、そのうちチョウになるのだと。1か月ほど前に私が大切に育てているパセリを猛烈な勢いで食べるキアゲハの幼虫を保護し、かごに入れて育てていました。孫は昨夜は、ぶら下がって動かなかったサナギが、きれいな羽をもつチョウとして羽化(ウカ)した現場を目にしたのです。羽化の瞬間は見ることはできませんでしたが、確かにサナギがキアゲハの成虫に変身したことを「発見」して、感激したのでしょう。羽化の直後は羽が乾き伸びるまではばたかず、飛び立たないので手に乗せて、じっくり見ることができます。

 生物学者の福岡伸一さんが雑誌「婦人の友」8月号に「私の自由研究」と題するエッセイを書いています。少年時代に人間の友だちがいなかった福岡少年は虫が友だちで、特にアゲハチョウに魅了されたそうです。アゲハの卵はミカンなどの若葉の裏に産み付けられ、それを見つけると葉っぱごと持ち帰って育てていたそうです。その体験が一流の生物学者への出発点・原体験になったのでしょう。

チョウのように幼虫‐サナギ-成虫と姿を変えることを完全変態といいます。幼虫の時期はせっせと植物を食べて脱皮をくり返しながら、体を大きく成長させます。チョウは決まった食草があり、アゲハはミカン類、キアゲハはセリ類、モンシロチョウはアブラナ類を食べて育ちます。他の種類の幼虫と無用な争いをせず、すみ分けをしている慎ましい自然の知恵に畏敬の念が湧いたと福岡さんは書いています。

孫が手に乗せたキアゲハは翌日、自然の中に放たれていきました。人生の初体験でした。
2023-7