「これは誰の手でしょう?」「そう、ゴリラの手です」「自分の手と比べて、似ているところと違っているところを言ってみましょう」「5本指で指紋やしわがあり、関節も同じですね」「とても大きいですね」

中学1年生で理科の授業のスタートの教材は、実物大のゴリラの手です。もちろん、教科書にはない教材ですが、このゴリラの手と比べることで、自分の手のすばらしさに気が付いてきます。「ヒトの手ならできて、ゴリラの手ではできないことをあげてみましょう」「細かい作業やお箸を上手に使えないでしょうね」ヒトの手の親指は他の4本の指と違った向きについていて、どの指とも指の腹どおしをくっつけることができます。だから、ヒトは器用に工作をしたり、料理を作ったりすることができます。

次に登場するのは「チンパンジーの手と足」です。「どちらがチンパンジーの手でしょうか」「Aと思う人は手をあげて」「Bと思う人は?」「では、なぜそう考えたのか、理由を発表してください」

人間の手に似ている、親指のつき方、手のひらの形などいろんな意見が飛び交います。議論が白熱してきたところで、再度「自分の考え」を問います。「さて、正解は? Aが手という人の理由は・・・・、Bが手という人の理由は・・・・」「ちょっと考えてみて、チンパンジーはどんな場所でどんな生活をしているかな」

この問いかけで、考えが変わる生徒が出てきます。「Aが手か? Bが手か? さてどっちでしょうか?」 生徒たちは私の口元を向け、「正解」を待ちます。イライラしてくる生徒もいます。「チンパンジーの手は、Aです」 Aと考えていた生徒が歓声をあげます。「そして、Bはチンパンジーの手です」生徒たちは、キョトンとしています。「チンパンジーの手はAで、Bも手です。どちらも手です。手ってどんな働きがありますか? 足は?」チンパンジーやゴリラなどサルの仲間は樹上生活をするために、四肢のすべてで木をつかむ「4本手」の動物なのです。(続く)
2023-10