国内屈指の名門校
灘中学・灘高等学校(昭和三年創立)
中・高完全一貫で、教師が担任団を結成し六年間持ち上がる。
各界に幾多の人材を輩出してきた同校の教育方針を校長・海保雅一先生に伺った。
日本の未來を担う人材が ここから大きく羽ばたく
「精力善用」
「自他共栄」
これが灘校の校是です。
「精力善用」とは、善のために心身の力を最も有効に用いること。
「自他共栄」とは、他者の完成を助けることなくして自己の完成はなし得ない、自他共に栄える
社会を作ろう、ということ。
各自が「精力善用」を実践しみんなの力が合わされば、幸福な世の中に繋がると、話すのは同校
の海保雅一校長です。
本校是は、同校創立時に顧問であった講道館柔道の祖である嘉納治五郎氏が柔道の精神として唱
えた言葉でもあります。
同校は、一学年に約220人足らずの生徒しかいないにも関わらず、さまざまな分野において頭角
を現す卒業生がたくさんいます。ただ学力が優れているだけでなく、知力、人間力が高いのは、この校是が教職員、生徒にも活かされているからかもしれません。
●灘校のグローバル人材の育成
海保校長は、世界の国々が自国の得意分野で切磋琢磨することが、世界の幸せに繋がると考え
れば「精力善用」、「自他共栄」の精神は、世界平和に通ずると言い、「英語を教えることだけがグローバル人材育成ではない」ときっぱり。
●中高一貫6年教育
一つの教育理念の下で数名の教師が担任団として6年間を持ち上がり、心の成長を見守れる教育制度です。
学習面での一貫教育のメリットは、年齢に合わせたカリキュラムを設定できること。中学時に繰
り返しが必要な学びを多く取り入れ、高校時には、それを幅広く深めていきます。
これこそが、想像力を豊かにし、発想力を高めていく灘独自の正にリベラルアーツ。また生徒たちは、好奇心を抱いたことを、一緒になって調べたり、議論を戦わせたりし、時には、その輪の中に教師が加わることもあるそう。
■編集室から子育てのアドバイスをお願いしました。
子どもには各々の個性があり、その個性にあった育て方があります。その見極めに努めながら子
どもの好奇心の芽を摘まず、気長に待ち、その好奇心から自主性を育ててください。また、無理や
りすすめるのではなく、本を読む機会を多くつくってください。
文字だけで場面を想像する力を養い、嬉しい、楽しい、悲しい、辛いなど、追体験して欲しい。
そうすることにより、人の書いた文章の内容を的確に判断できるようになる、そして「精力善用」
を実践できる準備となります。
2024-5-31
柔道の祖として有名な嘉納氏ですが、学習院教頭、第五高等学校校長、東京高等師範学校校長を歴任した教育家でもあり、自身で、理想の学校を創設しようとしていましたが、さまざまな要職を兼務し、多忙を極め断念したという逸話があるほどです。
灘五郷の酒造家有志が同校を創立しようとした際に、その中の一酒造家である嘉納家の親戚であった治五郎氏に顧問を依頼。治五郎氏は快諾し、本校是が定められ、今日まで灘校の建学の精神として受け継がれています。
嘉納氏は、1909年(明治42年)には日本人初のIOC(国際オリンピック委員会)委員となり、幻となった1940年(昭和15年)の東京オリンピック招致に成功したのは、彼の英語でのスピーチが素晴らしかったからと言われています。また、彼は、日米関係が悪化する中、英語教育縮小(廃止)を求める世論の高まりに、自ら日本英語協会会長に就任するなど、真の国際人でした。