
街歩きをすると時の私の楽しみの一つは街路樹を見ることです。
三宮から元町にかけては、私のとっておきの“街路樹スポット”があります。
大丸前のスクランブル交差点の辺りに、行灯(あんどん)のような形のぷっくりとしたハクモクレンが咲くと、春の兆しを感じることができます。
モクレンやコブシに紛れて気が付く人はほとんどいませんが“イペ”の木もあります。

実は、このイペの木はブラジルの国花です。2008年にブラジル移住100周年を記念して、鯉川筋に沿って7ヵ所に植樹されました。
鯉川筋は、かつて、海外への移住者が「旧海外移住センター」からメリケン波止場の乗船場まで、実際に歩いて通った道でした。
4月から5月にかけて、細い枝には不釣り合いな大きさの鮮やかな黄色の花をつけます道行く人は、
そのあまりに鮮やかで見慣れないイペの花を見上げながら、「何の木?」と話している光景を、私は何度も見かけました。
イペの木は、屋外での日差しや雨などにも強く過酷な環境にも耐えられるということで、ハーバーランドの海の広場のウッドデッキや神戸空港の展望デッキにも使われています。
鯉川筋で、黄色いイペの花に会うことができたならば、新天地での新しい人生の夢を抱いて神戸港から旅立った約25万人の人たちへ思いを馳せてみてください。
2013-4-19

神戸は全国一とも言われる『野外彫刻の街』です。そのきっかけになったのは、1968年(昭和43年)に始まった「須磨離宮公園現代彫刻展」でした。その後、「神戸具象彫刻大賞展」も実施され、その優秀作品が市内に設置されました。街を舞台に飛び出していった彫刻たち。「花と彫刻の道」(新神戸フラワーロード)、「みどりと彫刻のみち」(神戸文化ホール~神戸駅)の他にも、講演や広場に約500点が設置されているんですよ。
それらの中でも、とりわけ私が気に入っている作品は、東遊園地の南東の端にある「虹の石」という彫刻です。‐虹の足というのはふ確かに美しき‐という後藤比奈夫さんの句が黒い御影石に刻まれています。32年前に完成したそれは、手水鉢のようにくり抜かれていて、溜まっている水の底の俳句に気が付いて足をとめる人は、ほとんどいません。景色の中に同化しさりげなく置かれているため、作品とは気づかないのかもしれません。 私は、税関前からフラワーロードの西側を歩く時には、木陰にひっそりと在るこの「虹の石」の水面から目をこらして句を眺めるのを愉しみの一つにしています。美術館なら触ったりできないような作品に、目の前で食堂を営む人が布巾をかけていたり、また、腰掛けていたりという光景をよく目にします。そんな光景を目にする時、私はなんと贅沢な街に暮らしているのだろうかと感じます。

まだまだ寒いこの頃、どこかでかくれんぼをしているはずかしがり屋の春を探してみませんか…。
梅を観ながら、ベンチに腰をおろし遠くに神戸のうららかな海を眺め、贅沢な時の流れに身をおいてみませんか。