高齢者社会を考える

現在44才の人の半分は95才まで生きると言われています。

そのような超高齢化社会は、高齢者自身、そして高齢者以前の人々の生き方を、どのように変容させるのでしょうか。

まず、未成熟期。選挙権に続いて、民法上の成年年齢も引き下げられることはほぼ確実です。しかし、寿命が長くなったのなら、その分、人生の助走期間、大人に守られる期間が長くてもいいのではないか、もっと議論があって然るべきです。

次に、青壮年期。寿命が長くなったことで定年年齢が引き上げられたら、おそらく、ひとつの会社で定年まで勤めあげるというケースは減ってきます。場合によっては定年後の起業を見据えたキャリアアップも必要かも知れません。現在の政府が推進する「働き方改革」にはまた別の意図があると考えていますが、結果として働き方が変わる、それも新卒就職の段階から大きく変わる可能性が高いのではないでしょうか。そうすると、当然労働法制が大きく変わるでしょうし、起業支援のニーズも高まるかも知れません。

いわゆる高齢者のイメージも変わってきます。70代なんて仕事も恋愛も現役、ITに馴染んだ高齢者の像は、今の高齢者とはきっと大きく異なるでしょう。当然、彼らに関わる法規は、現在のいわゆる高齢者法(介護福祉関係法規、後見・相続等関連法規等)だけではなくなりますので、今以上に充実したサポートが求められることになります。

もっとも、「老い」の速さは本当に人それぞれ。個別のニーズに応じた、きめの細かいサービスが必要となりますし、健康ビジネスも、今以上に多岐にわたってくるでしょう。そして、価値観・生き方の個別化が進めば進むほど、最低限のルールとして法律やガイドラインの役割は大きくなります。

少子高齢化については、規模の経済の観点から憂う向きもあるようですが、「少ない」子ども、「多様な」高齢者を大切にすることを通じて、持続可能で幸福度の高い社会を実現するチャンスでもあると思います。人口構造だけは珍しくほぼ確実に予測できる未来ですから、前向きに捉える以外の選択肢はありません。

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兵庫県弁護士会所属  弁護士  佐々木  伸

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