数年前から相続についての関心が高まり、今では、「法定相続人は誰か」「法定相続分はどうなるか」「遺言は公正証書で」など、相続についての基本的な知識を勉強された方も多いのではないでしょうか。
しかし、いざ相続が開始した場面では、「亡くなったおばあちゃんがどれだけの財産を持っていたのかがわからない」という「相続財産の範囲・調査」でまず行き詰まることが多くあります。相続財産の調査には一定の手順がありますが、手続が複雑なものも多く、慣れない方にはなかなか難しい面があります。
また、相続財産の「範囲」の問題以外にも、「おじいちゃんが経営していた会社の自社株はどれだけの価値があるの?」という「相続財産の評価」や、あるいは「兄貴は自宅を建てるときに親から頭金もらったじゃないか」「オヤジの会社が大きくなったのは俺のお陰だ」という「特別受益・寄与分」の問題もなかなか難しいところです。相続財産を客観的に評価するには、会計士や不動産鑑定士の先生に鑑定を依頼しなければならないこともあります。しかし、財産価値がそう高くないと見込まれる場合には、鑑定費用との兼ね合いで、客観的に正しい評価を出すことよりもお互いに譲り合うことを選択した方が合理的な場面も多々あります。
また、特別受益・寄与分の問題は、過去のことを問題にするにも関わらず当事者の一人は亡くなっているわけですから、自分の言い分を立証できるだけの材料があるのかどうか、クールな判断が必要になってきます。
このように、相続実務の場面では、「誰が」「どれだけの割合で」相続するのか、ということよりも、圧倒的に、「相続財産がどれだけあるのか」に関する問題の方が多く発生します。また、合理的な解決のためには冷静な第三者の視点が必要なことも多くあります。
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兵庫県弁護士会所属 弁護士 佐々木 伸