政府のテレワーク促進政策には、非正規社員を増やしたり副業を促進したりしたいという政治的意図があると筆者個人は考えているものの、純粋に事象だけを捉えればもちろんメリットも多く、今後ある程度は広まり、また定着するのではないかと考えています。
もっとも、何らかの形で社外にデータが持ち出されるということは、それだけ流出のリスクも増えるということですから、会社としては、十分な対策と配慮をする必要があります。従業員の採用時に作成されることの多い「秘密保持に関する誓約書」に加え、注意喚起の意味も込めて、「テレワーク導入に伴う秘密保持に関する誓約書」等の書類を整備することが望ましいと考えます。
また、従業員の方は、上記の「秘密保持に関する誓約書」「テレワーク導入に伴う秘密保持に関する誓約書」などに署名している場合はもちろんのこと、たとえそのような書類に署名していない場合であっても、労働契約の内容として当然に秘密保持義務を負いますので、やはり注意が必要です。厳密には、たとえばオンラインで受講している研修の資料などが家族の目に触れるというようなことも秘密保持義務違反に当たります。また、ことテレワークに直接関係する事柄ではないかも知れませんが、会社が開発している新製品の情報などを家族に話してしまうという行為も、関係法規による罰則が適用される可能性があります。
「会社への帰属意識」というものの是非は文脈によると思いますが、もし、テレワークによりこれが弱まり、会社の財産である「秘密」を軽視するようになってしまえば、労使ともに不幸なことです。テレワークによるメリットを最大限享受するためにも、データ管理には細心の注意を払うようにしてください。