前を見て歩きましょう

規制や出張の際にはとても便利なキャリーバッグ。全く使ったことはない、というビジネスマンは珍しいのではないかというくらい広く普及しています。他方、車内や駅の構内という公共の場で、他の人のキャリーバッグが邪魔に感じて、顔をしかめたような経験もまた、多くの人にあるのではないでしょうか。
では、単なる迷惑を通り越して、たとえば他の人にキャリーバッグが当たってしまって、その人にケガをさせてしまった場合などには、キャリーバッグの持ち主は何らかの法的な責任を負うのでしょうか。
そもそも、歩行者は、人通りの多いところを歩くときには、人の流れに沿って歩くだけでは足りず、前方をしっかりと見て、できる限り他人と接触しないように注意して歩く義務があるとされています。さらにキャリーバッグをひいて歩く場合には、キャリーバッグをいわば自分の手足の延長として、キャリーバッグ自体も他人に接触しないようにあるく義務があるとされています。要するに、キャリーバッグの分だけ、注意すべき義務の範囲が広がるということになります。
そして、このような義務を怠って、その結果他人にケガをさせてしまった場合には、治療費や、場合によっては休業損害等の損害賠償責任を負うこともあります。
上記の歩行者一般についての注意義務は、「ながらスマホ」によって他人にケガをさせてしまった場合などにも当てはまると考えられます。過剰に委縮する必要はありませんが、最低限「前を見て歩く」ことだけは法も要求している、ということを知って頂いて、リスク回避に努めて頂ければと思います。

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兵庫県弁護士会所属  弁護士  佐々木  伸

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