我が国においては、定年後、同じ会社にほぼ同じ業務内容で再雇用される場合に、従前よりも賃金が下がることが少なからずありました。そして、先日、東京高裁で、「そのような待遇も社会の慣行として成立しており、賃金の下げ幅が合理的な範囲に留まっていれば違法ではない」という趣旨の判断が出されました(ただし上告中)。要するに、定年後、同じ会社に雇用される場合、やっていることは昨日までと同じであっても、今日から時給が下がる、という待遇が認められた、ということです。
もっとも、どの程度の下げ幅であれば合理的な範囲に留まるといえるのかは事案ごとの判断になり、今のところ一律の基準はありません。下げ幅そのものの大きさに加え、業界全体の景気動向や、使用者の経営状況等を総合的に判断して決めることになります。この件では、どの範囲の要素を考慮して判断をすべきか、ということ自体が争われ、第一審では、高裁とは逆の結論を採っていました。
このように、定年後再雇用における条件変更の事案について、裁判になった場合の結果を予測することは、そう簡単ではありません。
ましてや、勤務先との係争はためらわれるのが通常の感覚です。定年後の再雇用であればムキになることはない、というお考えもありうるところだとは思います。
しかし、昨日までと全く同じ仕事をしているのに、たとえば給料が半分になった、というようなことであれば、勤務先に待遇の改善を法的に求めることができるかも知れません。実際に争うかどうかは別にして、身近な専門家にご相談されることをお勧めします。
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兵庫県弁護士会所属 弁護士 佐々木 伸