「神戸人形」の話

 

「神戸人形」を覚えてられますか?
かつては、「神戸人形」を売っていたお店が市内に何軒かありましたが、今では店頭で売っているお店はなくなってしまいました。
「神戸人形」は、明治時代の初めくらいに神戸で誕生したからくり人形です。
奇抜なデザインの人形が小さな台の上に乗っていて、つまみを回すと、スイカを食べたりお酒を飲んだり、首を傾げる仕草をしたり口を開けたりして、見れば見るほど滑稽です。
この台の中には、だいたい6本から8本くらいの糸が仕掛けとなって入っています。ちょっとした精密機械のようです。
神戸っ子だけでなく、神戸を訪れた外国人にも人気があり、たくさんの「神戸人形」が、世界に旅だっていきました。
一体誰がこのような人形を考えて作り初めたのか、諸説ありはっきりした資料もないのと、これまで何度となく作る人が亡くなったりで廃絶の危機もありました。
かつて、一般的に広く普及していたのは、戦後に「神戸人形」を初めて再現した”キヨシマ屋”さんので、私が持っている2体もキヨシマ屋さんのです。
これまでも、このユニークなからくり人形を残して継承していかなければ、という人たちの熱意で守られて、奇跡のように今まで伝承されてきました。
現在、「神戸人形」を深く検証し研究した上で制作をされているのが、ウヅモリ屋・吉田太郎さんです。
地道で丹念な作業をしながら、「神戸人形」を確実に次世代へ繋いでくれています。
今、「神戸人形」を入手できる所は、日本玩具博物館、キイトとウヅモリ屋さんのインターネットでだけです。
旧き良き時代の、神戸ならではのからくり人形が、若い作家さんの手で残され継がれていくことに、感動しながら、手元の人形の愛らしい仕草を眺めています。

2017-7-21

神戸の名物  「シティー・ループ」バス

 

神戸には、観光の名物がたくさんありますが、中でも「シティー・ループ」バスはその代表的なものでしょうか。
その経緯を辿ってみると、1983(昭和58)年にはすでに提案がなされ、バスそのものが観光の名物になり、かつ市民の利便性にも繋がるように、ということが目的に掲げられていました。
“坂の街サンフランシスコ”に視察に行き、同じく坂の多い神戸にも相応しいのではないかと思った、という話はバスの計画に携わった、当時の経済界の関係者から聞いたことがあります。
その後、1987(昭和62)には、神戸開港120年祭の期間中に都心の周遊バスとして限定で試走しています。
ネーミングの公募で名前を「シティー・ループ」に決定して、いよいよ運行が始まったのは1990(平成2)年です。
着想から振り返ると、「シティー・ループ」には、実には34年の歴史がありました。
他の都市に先駆けての運行でしたから、後に、旅先の京都や尾道などで同様のバスを見かけた時には、何やら誇らしい思いすら感じました。
シックな緑を基調にした車体のデザインは、走る異人館と言われています。
車内のガイドさんの制服は、帽子も靴もセンスの良い神戸ファッションで揃えられています。
今や、神戸に来たらまず「シティー・ループ」に乗りたい、という世界中からの観光客で、連休や夏休みなどは、長蛇の列です。
北野町に住まれている人も、お買い物の帰りの足として利用されていて、まさしく、当初の理念どおり日々の暮らしの中で市民にも活用されています。
この夏には、開港150年で公園として整備されたメリケンパークに、期間限定で走る計画も予定されています。
遠方からひさびさの友人が来る、神戸での同窓会の幹事を引き受けた、というような時、「とりあえずループバスに乗ってみよう?」、というのも神戸っこに定着してきました。
「シティー・ループ」は、神戸にとってなくてはならない存在になりました。

2017-6-23

神戸の水

神戸には、自慢したい場所や物があちらこちらにたくさんあります。

さて、今年の2月に2回に分けて放映されたNHKの人気番組の反響は予想以上でした。時間をかけて丁寧に作り込まれた番組で、長年神戸で暮らしている人にとっても驚くこごが多く、裏方のスタッフの方々の調査力に脱帽でした。 さて、番組で紹介されていた中でも、とりわけ関心が高かったのは、「赤道を超えても腐らない水」関連のことでした。

明治の始めの頃、神戸はまだ井戸水に頼っていましたが、明治時代中頃に開港したことにより、もたらされたコレラなどの疫病が流行したこともあり、早急に安全な水道の設備が必要になりました。
そこで、1900(明治33)年に創設されたのが、「奥平野浄水場」「布引貯水池」です。国内では7番目の水道です。
長い間、神戸の水道は、この後に出来た「鳥原貯水池」とで支えられてきました。
六甲山系の花崗岩をくぐり濾過された水は、不純物がなく適度なミネラルを含む「軟水」です。
他の水に比べて保存もきくので、船に積み込まれた”神戸ウォーター”は、赤道をこえても腐らない水と、たちまち船員さんたちの間で評判になりました。
現在、市内のほとんどの水道水は琵琶湖を水源にしている淀川の水を浄化した水で賄われています。
4月から、布引の水を100%使った「神戸渓流」を再販売しています。
販売場所は、神戸市総合インフォメーションセンターと水の科学博物館です。
207-4-22

相楽園で習い事    苔玉・盆栽教室

私の家の小さな庭も、今花盛りです。厳しい寒さや、雨や風にも耐えたシクラメン、すずらん、モッコウバラにマーガレットが満開です。
ガーデニングも好きですが、今新しいことを始めています。
以前から興味があった盆栽、苔玉を習っています。
教室の場所は「相楽園」の中、雰囲気のある重要文化財の旧小寺家厩舎です。
講師の小山実智子さんは、姫路城の「好古園」で植木職人さんや造園技師さんなどと関わり技術を習得して、木や草花で独自のミニチュアガーデンの世界を創られています。
私が受講した日の”吊りしのぶ”では、古来からの紐の巻き方を伝授してもらい、また”リース”作りでは、生の枝を巻き付けて行く方法を習いました。
重要文化財の建物で、一心不乱に土を捏ねたり、苔を配置しながら、小さな緑の世界で、自分を表現できる楽しさを発見できました。
相楽園には他に、ガーデニングや珈琲講座などもあります。
樹齢約500年と伝えられる大クスノキや蘇鉄も見事な”都会のオアシス”相楽園です。
教室の行き帰りに、ツツジやアジサイ、菊や紅葉など季節の彩りも楽しんでくださいね。

相楽園 078 3$1 5155
900~1700
木曜日(祝日の場合は翌日休み)
大人 300円

関連記事

2017-4-21

~坂道の風景~   神戸文学館

神戸文学館は、1904(明治37)年に関西学院のチャペルとして建てられました。
以後、神戸大空襲で被災したり、「アメリカ文化センター」、中央図書館王子分室などさまざまな利用をされ歴史を刻んできました。外観をそのまま残して復元されたのは、1993(平成5)のことで「王子市民ギャラリー」として13年間親しまれました。
「神戸文学館」として生まれ変わったのは、2006(平成18)のことです。
その神戸文学館では、現在、企画展「坂道の情景〜神戸を描いた文学」(4月16日まで)が開催されています。
神戸は街全体が坂道といっても過言ではありません。文学者も、坂道を背景にした神戸の情景をたくさん描いています。
今回の企画展では、文学作品に登場する神戸の坂道を通じて、坂道に刻まれた情景が展開されています。
堀辰雄は港辺りから鯉川、トアロードのことを「旅の繪」の中で、宮本輝は「花の降る午後」の中で北野坂を書いています。
岡部伊都子は随筆の中で、

─神戸は坂の町です。
パンの匂いのする町です。─
と書いています。 私の好きな坂道はどの辺りだろう、かと思いながら文学館の美しい建物をあとにしました。

●平日10時〜18時
土・日・祝日9〜17時
休館日 水曜日
☎(882)2028

岡部伊都子(おかべいつこ)は「上方風土とわたくしと」─神戸の六甲山麓の本山(もとやま)に住んでいた時のことを書いている。このワンピースも愛用していた机と共に館内に展示してある。

D-journal H29年3月号より

関連記事

 ー空から比較ー

神戸港開港150年目を記念して作成された絵図が、現在、神戸市役所1号館24階展望ロビーに展示されています。
開港当時と現在の神戸の絵図を描いたのは、鳥瞰図絵師の青山大介さんです。
昨年の春から約9ヶ月をかけて作成された鳥瞰図です。
「昔」には、生田川が流れ、生田神社には参拝している人たちがいて、まだまだ建設途上の居留地の様子がよくわかります。
また、港内には、イギリス、アメリカ、フランスなど18隻の外国艦船が停泊していて、それぞれの国旗やスクリュー船か外輪船かの区別からマストの数まで、資料に基づき丹念に描き分けてあります。
「今」の絵図には、完成が予定されているビルや施設、入港する予定の客船なども盛り込まれています。
そして、中には、西国街道に潜んでいた追いはぎなど、作者だけの遊び心がたっぷりの隠し絵もちりばめられています。
青山さん自身が大震災を経験したのは18歳の時でした。
あえなく壊れ、なくなった街に対する思いは人一倍です。自分の絵図で、故郷神戸の復興を描き残しておきたい、そのことで街に恩返しをしたい、と気の遠くなるような精緻な鳥瞰図を描いています。
青山さんの作品を前に、150年の歳月の歩みに思いを馳せてみてください。

Dジャーナル2017-6-23号では青山大介さんの鳥瞰図を使い次のような紙面を制作しました。

あいな里山公園

 

阪神・淡路大震災から、22年目の年を迎えました。「1.17のつどい」で使われる竹灯明台(竹筒)を作っている場所として、「あいな里山公園」が写っているのをテレビで何度も目にしました。
「国営明石海峡公園神戸地区」愛称;あいな里山公園は、昨年2016に北区山田町藍那に、第一期開園をしました。
広大な敷地には、茅葺き民家や農村舞台、里山交流館など様々な施設があります。
しかし、なんと言っても素晴らしいのは、四季折々の豊かな表情をみせてくれる棚田や雑木林などの里山風景です。
“とんど”のように特別な行事もありますが、毎月、ここでしか体験できないような農作業と収穫、自然観察会や暮らしの体験などのここならではのプログラムがたくさんあります。
藍那地区は、何百年も前から、ちゃんと生活が営まれ、農業空間として維持され保たれてきた貴重な”里山”です。
三宮からバスで、乗り換えを含めても一時間以内で行ける”もうひとつの神戸”です。
私たちが幼い頃に見た元風景に会いに行きませんか。

あいな里山公園
●(591)8000
930~1600
入園料 大人410円

 

2017-1-29

紅葉の名所

 

 

神戸の都心、中央区から近い所に、紅葉の美しい場所があるのをご存知ですか。
まずは、新神戸駅から歩いて約20分で「徳光院」に着きます。ここは川崎財閥の川崎正蔵さんが、1887年から1905年にかけて私財で建立した臨済宗のお寺です。重要文化財の多宝塔もあり、誰でもが行ける「徳光院市民公園」になっています。
近年、にわかに外国人観光客に注目されている「布引の滝」の雄滝茶屋からは、わずか数分の距離の所にあります。
さて、ここから貯水地を見ながら、森林浴ハイキング道をゆっくりと約一時間で「紅葉の茶屋」に着きます。昭和2年4月に創業されていて、4代目の土居悦子さんが迎えてくれました。
創業者の土居樟巳さんは有名な「鈴木商店」にお勤めされてここから馬で通われていたそうです。
紅葉の茶屋の名物は、”すき焼き”です。丁寧で吟味された材料に加えて女将さんのおもてなしが、隠し味になっています。
今年の紅葉の見頃は、11月の下旬くらいかなぁ、と言われていました。 爽やかな風や光を浴びながら、鳥の声を聞きながら、道端の雑草やアケビやイバラや欄などの名前を教えてもらいながら、愉しく来た道を下りました。
紅葉の茶屋
土・日・祝日のみ営業
鍋料理は予約
●(241)3667

2016-11-16

ポートアイランドに  生田神社ができました

 

繁華街の真ん中に位置している「生田神社」の分社が、ポートアイランドに完成しました。

奈良時代の歴史書「日本書記」によると、生田神社は201年に創建されたとされていますから、1800年を越える歴史の中で、分社ができたのは初めてのことです。
ポートライナーの「南公園駅(IKEA・こども病院前)」から南側に数分歩き、県立こども病院の看護師寮の隣に建っていました。
分社は、高さ3mの節のない白木のひのき造りの鳥居と、社を構えています。
ポートアイランドが着工されてから50年の節目の年に、この人工島のほぼ真ん中に位置する場所に分社が造られることになったのは、氏子総代の堀さんの尽力があった、とのことです。
ポートアイランドには今まで宗教の施設がありませんでしたから、これからは、誰でも参拝できる拠り所ができたことを喜んでいる人は、氏子さんたちだけではないでしょう。
生田神社が、かつて新神戸駅の北側の砂山にあった時に洪水で布引の渓流が氾濫して流されそうになった時に、松の木が助けてくれなかった、ということから今でもケイダイには松の木がありませんでが、やはり新しい分社にも松の木はありませんでした。

2016-10-16

相楽園と盆栽教室

 

JR 元町駅から歩いて約10分で「相楽園」に着きます。
相楽園は、元神戸市長小寺謙吉氏の先代本邸の本邸の庭園で、明治18年頃から着手されて完成したのは明治の末頃です。 神戸市の所有になり一般公開されたのは、昭和16年です。
飛石や石橋、流れや滝などが配置された由緒正しい約2万坪もの広い日本庭園が、にぎやかな県庁界隈の真ん中に位置していて、背景が林立しているビル群、というのも面白いですね。
樹齢500年と伝えられている大クスノキも見事ですが、私は、樹齢約300年の蘇鉄が好きです。
相楽園の北東には、小寺謙吉氏が河合浩蔵氏に設計を依頼して明治43年に建築された「厩舎」があります。馬車を入れるための車庫の二階には厩務員のための宿舎が、東側には高い吹き抜けの天井がある馬房があります。外側からこの厩舎を眺める時、私はいつも、豊かな時代の有り様にに見とれてしまいます。
この重要文化財の厩舎で行われた”苔玉教室”に参加してきました。
姫路の好古園で、伝統的な盆栽などの技をを習得し、現代の暮らしに添うような作品を提案されている小山実智子さんが講師です。
盆栽や苔玉は初めて、という若い人と並んで、まずは、植物を保護して包み、大事な栄養素を含んだ土を練り上げることから始まり、土の乾燥を防ぐための苔を張り糸で巻き付けて縄で縛るまでの二時間、汗を流しながら無心に土や植物と向き合いました。
贅沢な馬房という空間での苔玉作り。
次はどんな植物と向き合えるのだろうか、と相楽園に行く楽しみが、またひとつ増えた気がしています。

問合せ 078 351 5155
各種の講座は要予約
相楽園への入園料、材料費が必要

 

2016-11-16

関連記事