神戸市内には、大小さまざまな、特色ある美術館や資料館があります。それらの中でも、今回は、特に知る人ぞ知るの資料館をご紹介したいと思います。
須磨区板宿(いたやど)にある「百耕資料館」は、昭和62年にできました。板宿地区の旧家・武井家が所蔵する歴史資料(旧摂津国八部郡板宿村関係文書)や美術資料が、展示されています。1845年に生まれ、兵庫県会議員、八部郡長、有馬郡長として地方行政にあたる一方、多くの文人墨客と交流のあった武井伊右衛門(たけいいえもん)の雅号゛百耕゛が館の名称になっています。
私が最初にこの資料館を訪れたのは、五年くらい前のことでした。その時は、年に二回ある企画展の時で、粉本の展示をされていました。粉本というのは、筆の勢いなどを学ぶための習作で、後々のために模写された下絵のことです。
武井も絵を習っていたこともあり、他にあまり例のない粉本は二千点を超える一大コレクションです。私が見た展覧会では、円山応挙、池大雅、与謝蕪村などの粉本があり、中には、本物の作品はなく、今や粉本しか残っていないものもあるそうで、絵画史の研究資料としても貴重なものになっているそうです。今秋の企画展では、粉本コレクション展が予定されているようです。
また、さらに驚くのは、武井家の広い邸内は魁春園(梅園)・秋錦園(菊園)を一般に開放していたとのこと、まさしく、現在のテーマパークの魁ともいえます。
平成22年にリニューアルされた館内は、原始~近現代までの板宿地区の歴史が、解説パネルと、12000点に及ぶ古文書などでわかりやすくの展示されています。
「百耕資料館」は、賑やかな板宿商店街を通り抜け、妙法寺川に沿って北側に歩いて行くと、住宅街の中にあります。 時間が止まったかのような空間の資料館を出て、梅や菊のころにはさぞやにぎやかだったであろう…とおもわれる庭を抜けて帰路につきました。
小さな印象深い資料館でした。
開館時間:10時~16時
休館日:常設展/月・火・水曜日
●(733)2381